歯科という診療科の役割

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歯科という診療科の役割

歯科の役割

歯科医師 糟谷宇一

私達は、普段生活している中では何気なく、あれが食べたい、これが食べたい、と、そう気にも掛けずに食事を当たり前のように楽しんでいます。そして美味しさや満腹感を味わった時には、とても幸せな気持ちになるものです。
しかし、そのような喜びも、肝心のお口という器官が無ければ、しかもお口の全ての機能が整ってなければそれもかなわぬこととなってしまいます。そこで、それらの機能が欠けたり、働かなくなった時に皆さんの食べるお手伝いをするのが歯科の役割です。
ここで出た機能という言葉は大変多くの意味を含んでいますが、これからの歯科の立場を考える時にはむしろ、口腔科としてのイメージを持っていただいたほうが分かりやすいのではないかと思います。
(歯科という言葉の響きでは歯のことだけしか扱わないという技術屋的な性格が前面に出るという誤解が生ずる恐れがあります。江戸時代まで医学の指針的な役割を果たした医心方には、歯科医が口中医として記されているのです。)

歯に虫歯が出来たり、歯を支えている歯肉に炎症が起きたりすれば当然痛みや腫れが出てきます。そのような時には歯医者さんに駆け込んだりした記憶をお持ちの方も少なからずいらっしゃることと思います。
ところが、これらの病気を、なってしまったから仕方がないと受身の形でとってしまう方は、考え方としてものすごく損をしてしまったことになります。

炎症とは、病気を治すための病気

私達のお口の中には常在細菌(多くは我々と共生という形をとります)として、多くの菌が生息しています。

ところがこれらの細菌は放っておくと、我々が食べ残した残渣を利用して細菌の棲みやすい環境、即ち歯垢を産生してしまいます。この酸が歯を溶かして虫歯を作ります。また歯垢はブドウ糖という利用しやすい栄養源(デキストリンという水に溶けない糖の塊)であるため、細菌は好んでこの中に住み着いてしまいます。

この歯垢が歯周ポケットという中に入ってしまうと、今度は我々の白血球が歯垢の中の細菌を異物として排除にかかります。この現象が歯肉の炎症です。つまり炎症とは病気を治すための病気だったわけです。

更に歯垢はお手入れ(歯垢清掃)をしてあげないと止まることを知らないで増え続け、口の中のみならず、咽頭、喉頭にも付着したりして、誤嚥性肺炎の原因となったりします。このようにもともと身体の中に存在していた細菌が悪さをするような現象を、難しい表現では内因性感染と言ったりします。

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歯垢清掃の習慣があれば全て予防できること

先ほどの損をしたということの意味はここにあります。即ち、これらの出来事は歯垢清掃の習慣があれば、全て予防できることなのです。
また、我々は従属型栄養生物(自分で栄養を作ることが出来ないので、他の生物を食料として摂取しなければならない生物)である以上、他の生物を食べなくしては生きていくことが出来ず、進化の上では「はじめに口在りき」で、口の重要性は決して無視できるものでは無いことを既に無意識の内にも自覚している筈です(厳密には初めに光在り、なのですがここでは深く考えないでおきます)。

ここまでお話すれば、ひらめいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この食べなくてはいけないという圧力が進化ということに繋がり、結果的にお口の機能となったのです。しかも不潔になり易い場所なのです。

元気でいる時にこそ常に実践

私たちは元気な時には自分で歯垢のコントロールを出来るわけですが、ひとたび機能障害を伴うような病気になってしまった場合には、どうしても人の手を借りてでも口の中のお掃除をしてあげなくてはなりません。
これら一連の機能の回復をも視野に入れたお口のお手入れ、これが「口腔ケア」ということになります。

理論的にはものすごく難しい話になってしまいますので割愛させていただきますが、食べること、とりわけ咀嚼(そしゃく)の意味するところは重要なところですので、元気でいる時にこそ常に実践、即ちよく噛み、口の中のお掃除を励行する、といったことに気を使っていただきたいと思います。

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専門的にはTCAサイクルが回るという言い方をしますが、早い話が、「梅干のおにぎり」が全てを物語ってくれます。

私は山登りをしていた時期がありました。常日頃トレーニングをしておくのは当然のことですが食事にはとても気を使いました。
一週間前くらいから少し肉類を多めにしてとり、山行2日前から穀類がエネルギーに効率よく変換されるように調整します。

専門的にはTCAサイクルが回るという言い方をしますが、早い話が、「梅干のおにぎり」が全てを物語ってくれます。クエン酸がブドウ糖を効率よく燃焼させエネルギーを取り出すのです(これには酸素の係わりが必要です。言い換えれば生物燃料電池といったところかな?)。

もちろんよく咀嚼することは言うまでもありません。
当然のことながら、梅干は携帯し、山行初日の弁当は梅干のおにぎりを3~5個スケジュールに合わせて持って行きます。山で如何にして食うか、これが山で生き延びる秘訣です。これらのことを日常の生活にも当てはめて考えてみると、食の重要性が浮かび上がって来ると思います。

俳優の森光子さんはご高齢にもかかわらず、元気はつらつで舞台をこなしていらっしゃいます。
その秘密は、肉を十分にお採りなっておられるのですが、骨や筋肉の元として有効に利用できる単位、アミノ酸に近い状態にまで分解して吸収しているのです。
そうです、森さんは80回の咀嚼をして十分に消化酵素と混ぜ合わせ、全ての栄養素の効率的な吸収を助けているのです。
それも意識的でなく自然な形で習慣として身についている訳ですのでこれほど強いものはありません。

昨今、教育改革が叫ばれています。が、私の独断と偏見としましては、まず子供たちの速食いをなくすことが先決ではないかと感じておる次第です。

「食」の意味

このように食には深い意味があるということを、そしてそれは食べるという機能をいろいろな面で失われた方にとっては切実なる問題であること、そして歯科的なアプローチがいかに重要であるかをご理解していただけたことと思います。

また、機会がありましたら歯科における四方山話をしながら、食べるということをご紹介していきたいと思っています。

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